|
「え!?どどどど、どうしてですか!?」 ルルーシュから離れる!?なんで!?離れたくないから困ってるのに!と、動揺しすぎておかしな声で尋ねた。 離れるということは、ユーフェミアの元へ行けということか。 ルルーシュの騎士である事を捨て、ユーフェミアの騎士になれと! 「きょ、協力っ!協力してくれるって!!」 言ったじゃないですか!! それを信じたのに!! 期待したのに!! 泣きそうになりながら、スザクはマリアンヌに詰め寄った。 皇妃相手に失礼な態度だが、頭に血が上っている為そんな事も解らなくなっていた。スザクの反応は想定内なので、マリアンヌの方は落ち着いたものだ。 「まずは落ち着きなさい。あら、ありがとうジェレミア」 ジェレミアはミネラルウオーターを差し出した。これだけ動いたのだから、当然喉は乾いている。マリアンヌはキャップを開けると、勢い良く水を煽った。キラキラと汗を輝かせながら水を飲むマリアンヌはとても美しく、思わず見とれてしまう。それに気付いたのかマリアンヌがくすりと笑い、「あなた達も飲みなさい」と促され、二人もまた頭を下げてから水を口にする。乾いた身体に冷たい水が染み渡っていくようだった。 一息ついた事で、スザクの頭の血も幾分か下がったので、マリアンヌは休憩スペースへと二人を導いた。椅子に腰かけると、体の疲労が一気に襲ってきた。 「いい、スザク君。今はあの子から離れて、正式に解任されるのを避けなさい。私もシャルルも、今回の件はあなたの味方よ」 「マリアンヌ様・・・」 「男でしょう、情けない顔をしないの。ルルーシュが周りから無能だと言われても、貴方はあの子の傍にいてくれた。いつもあの子たちを守ってくれていた事も、ちゃんと評価していたのよ?」 マリアンヌは優しく笑いながら言った。 シャルルとマリアンヌは親馬鹿だ。 特にルルーシュに関しては超がつくほど親馬鹿だった。 だから、かわいいかわいいルルーシュにくっついて歩くスザクは害虫認識され、昔から嫌われていたのだが、いつのまにか正当な認識をされるようになっていたらしい。 あれだけ自分を邪険に扱っていた皇帝にも認められていた事が嬉しくて、スザクは思わず眦に涙をため、キラキラとした笑顔を向けた。 わかりやすいわねとマリアンヌはくすりと笑う。 「貴方はその年になっても可愛いいままね。ジェレミア、少しは見習ったらどう?」 マリアンヌの視線の先にはジェレミア。 今のやり取りに感動したらしいジェレミアは、大量の涙を流し、声を出さないよう唇を噛み締めていたが、マリアンヌの言葉に「可愛く、ですか」と真剣な表情で答えると何やら考え始めた。 「マリアンヌ様のお望みとあらば、このジェレミア・ゴッドバルト。全力で可愛くなってみせます!!」 「・・・ああ、ごめんなさいねジェレミア。あなたは今のままが一番よ」 ご冗談を。とか、お戯れを。と笑ってかわすかと思ったのに本気で悩み始めたジェレミアに対し、マリアンヌは先程の言葉を撤回した。 「スザクくんはユーフェミアではなく、ルルーシュの騎士がいいのでしょう?」 「はい!」 元気よく返事をすると、マリアンヌはにこやかに笑い頷いた。 ジェレミアもまた「当然です!」と泣きながら叫んでいた。 「良い返事ね。ここで貴方を騎士として認めていないのは、ルルーシュとナナリーだけなんだから、もっと胸を張りなさい」 あの二人はスザクの事に関しては気が合うのよね。とマリアンヌは息を吐いた。 そう、このアリエスでスザクを認めていないのは、当のルルーシュと妹姫のナナリーだけ。顔を見れば喧嘩をし、互いに互いを疎んでいる兄妹だが、スザクの騎士の話しに関してだけは、何故か協力体制を敷いているのだ。 スザクはルルーシュの騎士では無い、騎士にはなれないと、二人は常に口にする。 ルルーシュはその性格の悪さからアリエスの従者からも嫌われ、離宮の外にも敵は多いぐらいだから、スザクがぞんざいに扱われるのはおかしな事ではない。だがナナリーは違う。嫌いだと公言し、手ひどく扱うのはルルーシュとスザクだけだった。 ・・・ナナリーを怒らせることを昔してしまったのだろうかと時折考えるが、初対面の頃から嫌われていたから、単純にナンバーズが嫌いなのかもしれない。 あるいは、同年代の男子が傍にいる事が嫌なのかもしれない。 これに関してはいくら考えても答えは出なかった。 「大体ね、うちの子の騎士がいい感じの育ってきたからって、横から掠め取ろうなんて冗談じゃないわ。・・・いい?貴方は時間を稼ぎなさい」 ああ、スザクの味方、というよりは うちの子の所有物を盗もうとする泥棒猫は許せない という感じなのだろう。 それでもまあ、味方なら心強いよね・・・?と、スザクは引きつりそうになる口元を隠すため、水を煽った。 |